第5章 超広視界双眼鏡
日本のJIS規格では見掛け視界65度以上を広視界モデルとしており、特に規定はないと思いますが、JIS規格の分解力の区分けにも見掛け視界75度以上の区分けがあるので見掛け視界75度以上のものを超広視界として考えたいと思います。

・ ZEISS 8x40 DELTAREM  見掛け視界90度(実視界11.2度)1937年発売

超広視界双眼鏡の元祖です。左右単独合焦式のモデルとしてはDELTARがあります。非球面(放物面)を接眼レンズに用いた、超広視界双眼鏡が今から70年程前に完成されたことは当時のドイツの技術力の高さに感心するばかりです。航空機からの偵察用として軍用に開発されたものですが、一般用にも販売されました。当時のカタログを見ると8x30 DELTRINTEM の価格の2倍程度の価格で市販されたようです。中心部の像は色収差も少なくとてもシャープですが視野の70%程より外側の像は急にぼやけます。目当てが少し高すぎるために視野絞り全体をはっきり見るのが難しいです。コーティングが施されていないのが残念ですが視野周辺でのプリズムの光量も十分あります。非球面接眼レンズは吉田正太郎著「望遠鏡光学・屈折編」によればツアイスのロベルト・リヒターの設計によるとあります。

・ ZEISS 8x40 (DELTARMO)  見掛け視界90度(実視界11.2度)1937年頃

DELTARの単眼鏡モデルです。入手した際のコンディションが良くなかったので、清掃のためと接眼レンズの構造を知りたく分解してみました。セットビスが固着していて(以前に分解清掃された際に接着されたようです)レンズ単体までには分解できませんでしたが、視野絞りの径は約28mmでした。この値から対物レンズの焦点距離が約140mm(F/3.5)、接眼レンズの焦点距離は約17.5mmとなります。視野レンズは焦点面に向かって凸面になっており、そこから数mm離れた位置に焦点位置があります。このため視野レンズのゴミや傷には十分な配慮が必要と思われます。プリズムは大型の凝った形状のものが用いられています。プリズム座に合わせてとても堅くはまっていて破損しないように外すのはたいへんでいた。

視野周辺のプリズム減光
視野絞りと大型プリズム
接眼側プリズム
接眼レンズ、視野レンズと焦点調節用ヘリコイドねじ
続く
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