第8章 謎の反射双眼鏡
反射光学系を用いたとても変わった双眼鏡を静岡の方から入手しました。この双眼鏡はどのような目的でいつ頃作られたのか?。どこにもマークや仕様など何も彫刻されておらず、製造メーカーも不明です。接眼レンズ形状や全体の作り、残っている焦げ茶色の塗装などからおそらく第2次大戦以前に日本で軍用として試作されたのではないかと思います。写真から大体の構造はご想像ください。光学系は対物側から、防塵ガラス板(平行平面)、主鏡(有効径は80mm位)、防塵ガラス板の背後に3本の支柱で吊られた小さな2次鏡、そしておそらく正立レンズ群、眼幅調整用として菱型プリズムと同様の構成となる折り返しミラー2枚、接眼レンズとなっています。防塵ガラスの有効径は100mm、倍率は目測で10 倍位、重量は実測7.7kgです。双眼鏡として反射光学系を用いるねらいは軽量化と小型化と思います。当時の反射鏡メッキの耐久性や調整作業の難しさ、2次鏡よる視野中心の影りなど困難な面が多いと思いますがどのような目的で企画されたのか、10×70mm程度の仕様であればレンズとプリズムによる普通の構造の手持ち用双眼鏡が開発されており不思議です。技術的な挑戦だったのでしょうか。この双眼鏡をご存知の方から情報をいただけると助かります。

「兵器を中心とした日本の光学工業史」の海軍航空光学兵器の章には、昭和18年夏頃に1台だけ日本光学で試作されたという「10cm短」双眼鏡の記述があります。航空機からの機上偵察用に開発されたとあり倍率は15倍、写真も図も記載されていないので詳細がわかりませんが、プリズムの代わりに反射鏡を用い重さは3kg程度で見え味はプリズム式に比べ実用上差し支えなかったが製作上難点が多く量産に移されなかったとあります。この双眼鏡は対物レンズの代わりに凹面反射鏡を使ったのかどうか記述はありません。倍率も異なり重量も軽いので別のもののようです。

俯視角度は30度、ボデーはアルミ合金鋳物製。
2次鏡の大きさは25mm位、瞳の開かない昼間の観測では中心遮蔽のため視野中央が暗くなる影響がでそうです。1次焦点の近くにおき最小の大きさにしているのではないかと思います。 眼幅調整用として菱型プリズムと同様の構成となる折り返しミラー、奥に正立レンズが見える。
続く
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